最初から詠む方はこちらでござる。
…ガチャ。
手に掛けた扉を恐る恐る開けてみる。
いつもながら、仲間たちは俺の腰ひもを掴んでビビりまくっている。

…ギィィ……ィ…ィ……
音が細くなり、代わりに「沈黙」が前に出てくる。
息を吸う音すらうるさい。
頭の上から湿った空気が覆いかぶさるように体中に広がる。
体が先に理解して、頭が後から追いつこうとしている。
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(´・ω`・)エッ?
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俺は、二度目をこすった。
扉を開けたその場所は世界が違う。今までとは全く違う。
目だけじゃ足りず、脳を強制的に再起動してみた。
……だが、変わらない。
空気が違うだけじゃく、色のノリも違う。
さっきまでいた場所と地続きのはずなのに、仕様がごっそり変わっている。
さっきまでドラクエの世界にいて、扉を開けた瞬間ポップな世界が広がる。
しかもキャラ全員が、俺を見て固まっている。
いや、ちょっと待てよ。
固まってるの、俺のほうかもしれない。
状況が飲み込めねぇ…。
恐怖より驚きよりもまず先に、意味が分からない。
この手の異常は、だいたい後から効いてくる。

で、ここでようやく気づく。
ああ。
これ――
「別次元の世界に飛び込んだ」やつだわ。
自分以外が支配する世界。
つまり、他人の考える頭の中。または、初めて踏み入る領域。
現実世界においても他人と趣味嗜好が違えば、味覚の違いだってある。
さらに国が違えば、言語や文化、宗教の違いだってある。
別視点で言えば、毎年MVPを獲得するようなバリバリのプロ野球選手。
じゃ、心機一転Jリーグで大活躍できるかと言えば、また別問題。
別次元とはそういう場所だ。
このダンジョン(人生)には、必ずと言っていいほど岐路に立たされる。
それも一度や二度どころではない。
振り返ってみるとそこがターニングポイントとなる事がある。
面白いじゃないか。
フフッ…アイツもこの世界の冒険者なのか。

しっかり生きてる。
ヤツにはヤツなりの「どう生きるか」という哲学がある。
俺とは色々と違う。
ソロ(独り)だ。これだけでもかなり生きるという哲学が違う。
ソロで生きるというのは、誰にも縛られない。
その代わり、誰からも気付いてもらえない生き方だ。
誰にも邪魔されないが、助けも来ない。
全滅したって責める相手も、慰めてくれる相手もいない。
それでもアイツは、この世界でちゃんと立っている。
色の違う空気の中で、俺の知らない仕様の違う地面を踏みしめて、前に進んでいる。
しかも、涼しい顔で。

……すげぇな。
俺は、腰ひもを掴まれている。
仲間は相変わらずだ。
怖がって文句を言って、それでも離れようとしない。
これが俺のパーティだ。
世界が変わっても、ルールがひっくり返ってもこの関係性だけは変わらない。
不思議なものでそれに気づいた瞬間、さっきまでの混乱が少しだけ引いていく。
ああ…そうか。
ここでも同じだ。
世界がどれだけポップになろうが、背景がどれだけカラフルになろうが関係ない。
人生というダンジョンは、相変わらず”選択制”らしい。

例えばソロで行くのか、それともパーティを組むのか。
どちらが正解かなんて、エンディングを見るまで分からない。
もしかしたら、エンディングを迎えても分からないかもしれない。
……まあいい。
俺は相変わらず、かわのよろいで突き進む。
仲間も今いるメンバーで十分だ。
そう腹をくくったところで、視界の端にキノコみたいなものが見えてきた。
食うべきなのか、それとも踏むべきなのか。

「迷っちゃダメよ、食べちゃお♡」
仲間の一人が、後ろからそう囁く。
人生は、いつだってそのくらい雑な判断から次の章が始まる。
…続く
第四話は、こちらから。
※本記事および画像は特定作品を再現するものではありません
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1月5日まで休みの人もいれば、5日から仕事始めの人もいる。
1月5日という日は、そんな労働者の気分が錯綜している日。

という労働者の気分を代弁して、1月6日に発信している俺はまだ休暇中。