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人生はノーヒント 其の伍 -最終話-

最初から詠む方はこちらでござる。

ぬわぁぁぁー。

こんなことをカタカタとキーボードを叩いている自分が気恥ずかしい…。
恥を忍びながらも物語を書かなきゃと不思議な使命感が俺を後押しする。

その甲斐あってか、見事に俺も神獣を呼び出すことに成功した。

なんてこの世界とは不釣り合いな姿なんだ…。
ぷにゅぷにゅしてて、しかも頼りなさそうだ。
姿はあおむしだけど…水虫じゃないだけまだマシかと自分に言い聞かせる。

だけど、よーく見てくれ。あの眼光、鋭いまなざし。
気合だけは十分って感じだろ?

それよりなにより、呼び出したこと自体が大したもんだわ。
フィクションだから、どうにでもなるんだがな。

せっかく呼び出したんだから、この世界をクリアしなきゃな。
おっ、早速、それっぽいモンスターが現れた。

もちろん、期待通りやられる。
炎を吐かれ、やむなく敗走する。

そりゃ、ダンジョン(人生)には、かなわぬ敵なんざ、腐るほどいる。
逃げながら俺は思う。
背中にまとわりつく熱気と、足元の砂の熱さがやけに現実的だ。

あおむしも逃げる。
ぶよぶよした体を地面に押しつけて、蛇腹を ギューーウッ と縮めては、びょん!っと伸ばす。
そのたびに、地面が少し揺れる。

「おい、あおむし!もうちょい、神っぽいことできんのかー」



思わず大声を浴びせる。

返事はない。
ただ、必死に息を切らしているのだけはわかる。
その姿を見て、なぜか胸がチクッとした。

強くないし、モテそうにない。
だけど、胸の奥に熱い何かを秘めているのをひしひしと感じる。

モンスターが激しい炎とともに、咆哮(ほうこう)をあげる。
そのときあおむしの目が、炎を映してまばゆく光った。
そして逃げるのをやめ、そこに立ち尽くす。

ああ、なるほど…こいつは「戦う」神獣じゃない。
「耐える」神獣だ。

社会からの理不尽な要求も、意地の悪い上司からも耐えるかのように…。

フフッ…もう笑うしかない。
さすが、俺が呼び出した神獣…恐れ入ったぜ、あおむし君よ。

あおむしは依然、耐えて耐えて耐えて耐えて耐え抜いている。
あの総理にも決して、引けを取っていない。
モンスターの息が上がり方が、だんだん激しくなってきた。
両者とも、しかめっ面とは少し違う、何とも言えない表情を浮かべている。

もう、これ以上攻撃しても無駄だと悟ったのだろう…。
モンスターは諦め、その場から立ち去って行った。
その姿は、まるで獲物を取り逃がした百獣の王のようだ。

俺は、ホッとため息をついた。
前を見ると出口らしき扉がある。このステージはクリアだ。
モンスターを倒したかった悔しさはあるが、今の俺には到底無理な敵だった。

生きていく上で、耐え抜くことも必要なスキル。
これを会得したことだけでも、十分このステージクリアには意義がある。
そして何より、一緒に逃げなかった神獣あおむしが、ここにいる。

出口の扉に近づいて行く途中、どこからともなくレベルアップ音が鳴った。

🎶~🎶~🎶~♪

『つよさ』が一覧が浮かぶ。

・攻撃力:+0
・回 避:とんずら⬆🏃‍♂️‍➡️
・カリスマ:上がる要素がねぇよ
耐久性:+1
・精神力:フッフッ

地味なレベルアップだ。
だが、この+1がなければ詰む場面を、俺は幾度も経験してきた。

ふと、あおむしが体を起こす。
さっきより少しだけ、目が澄んでいる。


ああ、そうか。
こいつはモンスターを倒すために現れたんじゃない。
俺が途中で投げ出さないための重りだったのだ。
俺がとんずらするたび、隣で耐え続ける存在。

「明日、来てくれるかな?」

独り言みたいに聞くと、あおむしは、ほんのわずかに体を上下させた。
返事かどうかは分からない。
本当は「いいとも~」って言って欲しかったが、それ以上欲張るのを俺はやめた。

それでもあおむしは存在して、俺はキーボードを叩いている。

――つまりこの物語、
まだ詰んではいない。
現実社会は変えられないが、この物語は俺がいかようにも出来る。

このあおむし、蝶になるんじゃなくて、そのまま残業耐性が上がるタイプにするか…。

まだまだ、エンディングまでの道のりは遠い。
このダンジョン(人生)をクリアするには、前進あるのみ。

俺は、出口の扉に手をかけた――

– 完 –

※本記事および画像は特定作品を再現するものではありません

昨日(1/7)より、年始の仕事始め。
毎度ながら、我がビーフプレイス社は仕事始めが遅い。
その分、年末はギリギリまで頑張っています。

ああー、体が動きましぇん。。

『神獣ドラえもん』を呼び出せたらエエのに…。

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