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続)日常に潜む小さな戦場

前回の続きはこちら

🤷🏻‍♀️:抜かしてませんけど?

👩🏽‍🎤:いやいや、抜かしてますやん。

【独立式】なので、よし子は抜かしていない。
ただ、独立式と言っても通路が狭く、さらに床に掲示されているマークの上に客が立っているので見えにくい。

周りの客もソワソワしているようにも見えるし、気まずそうにも見える。
この「気まずそう」というのは、キレ子が間違ってキレている。
その後、どういう顔をするのだろうと心配している心理も含まれていると思われる。

🤷🏻‍♀️:(床を指さし)ちゃんと並んでますが。

👩🏽‍🎤:…。

まぁ、そうなるだろう。
周りの客のほぼ全ては、そうなると見越していたはずだ。

気まずい…非常に気まずい。

目が泳ぐ。
視線をどこに置いたらいいのか分からない。
誰もキレ子を見ようとしない。
これが日本社会固有の優しさであり残酷さ。

そしてキレ子は、一瞬だけ周囲を見渡した。
その瞬間、周りの客の視線が一斉に商品棚へ逃げた。

お茶を見る人、天井のポップを見る人。
冷凍餃子を熱心に凝視するオッサンさえいる。
買う気ねぇだろw

だが、この状況で一番冷静だったのはよし子。

🤷🏻‍♀️

その姿はもう客というより裁判官。

床マークは証拠。矢印は証言。
そして、他の客が成す列は完全なる物証。

ここで、キレ子の完全なる敗北が決定づけられる。

その後、静かに列へと戻った。
その時、律儀にも最後尾に並び直したのが印象的だった。
揉めて列を離れている間に、他の客が次から次へと並んでおり、キレ子は余計と遅くなったという顛末が待っていたのだ。

完全に打ち取られた後、さらに他人に罵(ののし)られているようだ。
泣きっ面に蜂とはこのこと。

キレ子が並び直した後、店内は再び普段のコンビニに戻った。

レジの音、袋の音、コーヒーマシンからの香り。
ただ、キレ子を除く人々の心に同じ思いが浮かんだに違いない。

「あぁ…これ…帰り道しんどいだろうな…。。」

戦場にはこれと言った最適解がない。
今回の様に、床のサインにさえ打ちのめされることだってあるのだ。

だが、それもまた人生の小さなイベント(戦(いくさ))みたいなものだ。

キレ子よ、今日は負けた。だが、大丈夫だ。
コンビニは全国に死ぬほどある。
まだまだ、リベンジの機会はある。

小さな行列に見える社会心理。
だがそこには、他人との不公平さや距離感。そして日本人特有の空気を読む文化。

こうしたものが全て詰まっている。
ほんの数分の待ち時間なのに、人間の心理が良く見える場所だ。

コンビニのレジは、ただの会計場所ではない。

そこには、秩序と混乱が交差する場所。
並び方一つで、平和にも戦にもなってしまう。

諸君らも次にコンビニに行き、床のサインを見たら思い出してほしい。

そしてそのサインは、レジ前の小さな戦を起こさないための、平和条約なんだ。

あんな矢印テープ一本で平和が保たれている。
文明とは、実はチープなのかもしれない。

ただし──
それでも、稀に現れる。
条約を守らないヤツが。

ところで俺、健康診断に行ってきます。
そういえば、💩取ってなかったわい…。

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