フルマラソン前日にもなると「炭水化物を摂取せよ」という免罪符が振り降りてくる。

これが、いわゆるカーボローディング。
明朝、香川マラソンがありそして、それに出場するのだ。しかも、記念すべき第一回大会。
筋肉の中にグリコーゲンという燃料を溜め込み、42.195kmという人類の悪ふざけに備える儀式だ。
普段なら、夜にパスタ大盛りなんて食べてたら「ヤベェ…太ってしまう…」と罪悪感が湧く。
だが、この時期だけは違う。
パスタ、うどん、白米。
炭水化物が全て“戦略的物資“になる。

おかわり?
もちろん、作戦の範疇だ。
ラーメン?
補給だ。
デザート?
…これは、ちょっと怪しいがまぁ、士気維持と言うことで許される。
ここで重要なのは、カーボローディングはドカ食い大会ではないと言うこと。
人の体というのは、よく出来ているようで案外そうでもない。
急に大量の炭水化物をブッ込んでも、全部を燃料タンクに入れてくれる訳じゃない。
間違った行動は、ただのドカ食い。
そうならないためにも、ちゃんとした摂取方法がある。
正しいやり方は、いたってシンプル。

レースの3日前から炭水化物の割合を少しづつ増やす。脂質は控えて、消化の重いものは避ける。
そんなに難しく考えなくていい。
要するに、揚げ物ドッカーンじゃなく、ご飯コツコツ作戦だ。
トップランナーもだいたいこんな感じらしい。
パスタ、白米、パン。
見た目は全て白い食べ物で、随分と平和な食卓である。
だが、ランナーの頭の中はちょっと違う。
パスタを巻く。
ご飯をよそう。
うどんをすする。
これは食事ではなく、エネルギーの事前配備である。
遠足の前日にリュックにお菓子を詰める感じに近い。
本当は200円までなのに、550円分を詰めているあの感じ。

人は明日の楽しみのためなら、心の中の悪魔の囁きについ、流されてしまう。
先生が、いちいちリュックの中まで見ることは無いと踏んでいるからだ。
人生で初めて規律を破る。
おそらく、大半の人々はこの遠足のお菓子をちょろまかしたことだろう。
これが出来ない気の小さな少年少女でさえ、水筒のお茶をオレンジジュースに変える。
フフ…愛らしい思い出である。
脱線したが、話を戻す。
そして、ここからが面白いところ。
このカーボローディングは、体だけではなく心にも効く。
エネルギーチャージ、OK!
この感覚があるだけで、スタートラインの景色が少し変わる。
不思議なもので、食べただけでテンションが上がってしまう。

冷静に考えると、随分と不思議な話だ。
けれどフルマラソンという競技自体、42km走るというトチ狂った行為。
この時点で、だいぶ不思議なので問題ない。
前日の最後の夕食も炭水化物を摂取する。
パスタを巻き、ご飯をよそいながら、うどんをすする。
ただし翌朝の便器に座りながら、こう呟くだろう。
昨日、ちょっと食べすぎたかもな…。
屁を出し、ゲップを出しながら。

出すものは全て出した。
あとは、いいタイムを出すつもりだ。
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前日受付の様子

去年オープンしたばかりのピカピカの『あなぶきアリーナ香川』
気合いが乗ってきましたわ。